
透きとおる水と夏の記憶
90分夏の盛り、家族と友人を連れて、姫路の山あいを流れる清流へと足をのばしました。市街地から車を走らせ、緑のトンネルをくぐり抜けると、空気が一気に澄んでいくのがわかります。木々のあいだから差し込む光、川のせせらぎ、そして耳をくすぐる蝉の声。都会の喧騒とは無縁の、もうひとつの姫路がそこにありました。 たどり着いた先に広がっていたのは、思わず息をのむほど美しい渓谷でした。両岸には深い緑の山がそびえ、苔むした岩がごつごつと連なります。その懐に抱かれるように、水が静かに、けれど豊かにたゆたっていました。何より驚かされたのは、その透明度です。水底の石ひとつひとつ、淡い緑や褐色の模様までもがくっきりと見え、まるで水などないかのよう。光を受けて川面はエメラルドに、浅瀬は黄金色にきらめき、自然がつくり出す色彩の妙にしばし見とれてしまいました。 子どもたちは、到着するなり待ちきれない様子で水へと駆け込みます。最初は冷たさに歓声をあげていましたが、すぐに慣れ、思い思いに遊びはじめました。水をかけ合い、しぶきを散らし、ひとしきり笑い声が渓谷にこだまします。ある子は岩のあいだの深みをのぞき込み、小さな魚を見つけては夢中になって追いかけていました。大人も負けてはいられません。気づけば私も水に入り、子どもたちと一緒になって水しぶきを浴びていました。日頃の肩書きも年齢も忘れ、ただ夏を全身で味わうひととき。これほど心が解き放たれる時間は、なかなかあるものではありません。 清流の魅力は、遊びだけにとどまりません。岩に腰かけて足を水に浸せば、ひんやりとした流れが火照った体をやさしく包み込みます。見上げれば、揺れる木漏れ日。耳を澄ませば、水音と鳥のさえずりが重なり合う、自然のしらべ。スマートフォンを置き、ただそこに身を委ねるだけで、心の奥まで洗い流されていくようでした。 姫路といえば、白く美しい城を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、少し山へ分け入れば、こうして手つかずの自然が今も静かに息づいています。守られてきた清らかな水と、変わらぬ緑。その尊さを、肌で感じた一日でもありました。 帰り道、子どもたちは疲れて眠りに落ちていました。その安らかな寝顔を見ながら、ふと思います。豪華な旅でなくとも、特別な場所でなくとも、大切な人と笑い合った時間こそが、何よりの宝物なのだと。 清流での一日は、そう長い時間ではありませんでした。それでも、透きとおる水と、はじけるような笑顔は、きっといつまでも色あせることなく、私たちの夏の記憶として残り続けるでしょう。また来年も、ここへ帰ってこよう――そう心に決めた、忘れがたい一日となりました。
体験の詳細
所要時間
90分
カテゴリ
wellness


